【実践編】露出につながるプレスリリースの作法
全3回に分けてお届けしているプレスリリースシリーズ。
基本編、応用編では、それぞれ露出につなげるためのチェックリストを紹介しました。
最終回となる実践編では、実際のプレスリリースを見ながら、理論と現実との折り合いを考えます。
基本編、応用編では、それぞれ露出につなげるためのチェックリストを紹介しました。
最終回となる実践編では、実際のプレスリリースを見ながら、理論と現実との折り合いを考えます。
題材として取り上げるのは、コロナ禍がきっかけで色々な会社が参入したマスクの製造販売です。
いくつかの会社のマスク販売のプレスリリースを比較し、基本編で触れた4つの重点ポイントが満たされているか、分析してみましょう。
いくつかの会社のマスク販売のプレスリリースを比較し、基本編で触れた4つの重点ポイントが満たされているか、分析してみましょう。
- ①ニュースバリューをタイトルに入れる
- ②数字を出す
- ③大切なことは第一段落で書ききる
- ④社会的意義を説く
例1:シャープ シンプルな中に一工夫が光るリリース
元のプレスリリース:個人のお客様向けECサイトでのマスク販売開始のお知らせ
発表の早さと、異業種ということから、かなり話題になったプレスリリースです。
2020年3月末に政府納入用のマスク生産開始を発表、4月21日に一般販売を発表と、スピード感があります。
アベノマスクが配布されるなど、マスク不足への関心が一番強かった時期で、PR上の先行者利益をとりました(PRの世界では、二番手には価値がありません)。
アベノマスクが配布されるなど、マスク不足への関心が一番強かった時期で、PR上の先行者利益をとりました(PRの世界では、二番手には価値がありません)。
タイトルは非常にシンプルですね。
筆者なら「1日15万枚生産」を入れたくなりますが、世間の関心の高さを考えるとこのままでも十分な引きがあります。
ゴテゴテと情報をつけると、読んでもらえる可能性は上がりますが宣伝臭くなるので、素材そのものの価値が高ければ不要です。
筆者なら「1日15万枚生産」を入れたくなりますが、世間の関心の高さを考えるとこのままでも十分な引きがあります。
ゴテゴテと情報をつけると、読んでもらえる可能性は上がりますが宣伝臭くなるので、素材そのものの価値が高ければ不要です。
今回、ニュースバリューとなる数字は生産枚数です。
この点シャープは上手で、生産体制が揃う前の早い段階での発表ながら「今後生産能力を増強し50万枚の販売を目指す」と表記し、完全にコミットはせずにインパクトのある数字を出しています。
この点シャープは上手で、生産体制が揃う前の早い段階での発表ながら「今後生産能力を増強し50万枚の販売を目指す」と表記し、完全にコミットはせずにインパクトのある数字を出しています。
また、第一段落は経緯の事実が列挙され、シャープがコロナ禍においてどのように社会貢献を進めてきたのかが一目瞭然です。
勝因は発表の早さですが、それでもシンプルな中に、一工夫が光るリリースと言えるでしょう。
例2:良品計画 企業理念はよく伝わるが、マスクPR戦線においては惜しいリリース
元のプレスリリース:マスク販売に関するお知らせ
シャープから遅れること約1か月、2020年5月26日に良品計画が出したマスク販売のリリース。
文面を見るに、5月1日に最初の商品を発売したときに、リリースをし損なっています。
5月1日と言えばシャープから1週間少ししか遅れていないので、無印良品らしさで差別化できれば、それなりの露出を見込めたのではないでしょうか。
5月1日と言えばシャープから1週間少ししか遅れていないので、無印良品らしさで差別化できれば、それなりの露出を見込めたのではないでしょうか。
5月末頃にはマスクの値崩れが始まり、どこからか流れた不織布マスクが露店で売られるなど、世相がだいぶ変わってきましたので、マスクの新発売というだけでは4月ほどのニュースバリューはありません。
そんな良品計画のリリースのニュースバリューは、ずばり「夏」。
マスクによる熱中症リスクが取りざたされ始めた時期に対応して、「夏素材」という言葉で差別化しています。
マスクによる熱中症リスクが取りざたされ始めた時期に対応して、「夏素材」という言葉で差別化しています。
しかし本当にマスクが涼しいのか検証されていなかった点が残念で、さほど話題にならなかった理由でもあると思います。
例えば、「外気温マイナス3度の冷感!」などタイトルに入れていればかなり話題になったと思いますが、衛生用品の宣伝には厳密な客観性が求められますので、難しかったものと推測します。
具体的な数字という意味では、「前の製品が100万枚売れた」と書かれていますが、今回発売するマスクとは関係ないので、記事の見出しには採用しにくいです。
とはいえ、筆者個人としては良品計画のリリースはかなり好きです。
リリースの顔である第一段落に、
- 毎日つかうから肌触りが良いもの
- 手洗いで繰り返し使える
などの無印らしいキーワードが盛り込まれ、社会に貢献するぞ、という企業の哲学が強く伝わってきます。
常用漢字の「使う」「暮らし」をあえてひらがなで表記しているところも、無印らしさを表現するこだわりなのでしょうか。
企業理念はよく伝わりますが、マスクPR戦線においては惜しいところの多いリリースでした。
例3: ユニクロ これぞ業界最大手!なリリース
6月に入り、「マスクを供給すれば偉い」という雰囲気はすでにありません。
そんな中、世間で話題をさらったのがユニクロのエアリズムマスクです。
そんな中、世間で話題をさらったのがユニクロのエアリズムマスクです。
ユニクロは、マスクの性能をPRポイントにしています。
マスクが世の中にあふれ始めた時期なので、当然の方向です。
マスクが世の中にあふれ始めた時期なので、当然の方向です。
- BFE99%カット
- 紫外線90%カット
- 20回洗濯しても一定の効果が持続
など具体的な数字が矢継ぎ早に出てきて、性能をアピールしています。
衛生用品であるマスクの宣伝は薬事法の制約を受けるため、性能をうたう場合には表現の厳密さに加えその根拠を示すことが必要です。
ユニクロが衛生用品を扱うのは初めてではないかと思いますが、リリースの後半部分の注釈でしっかり対応しています。さすが大企業です。(良品計画は、その点涼しさを匂わせただけなのでやはり惜しい…)
ユニクロが衛生用品を扱うのは初めてではないかと思いますが、リリースの後半部分の注釈でしっかり対応しています。さすが大企業です。(良品計画は、その点涼しさを匂わせただけなのでやはり惜しい…)
さらに、供給体制もしっかり定量的に述べているほか、「全店で6月19日に発売」と書ききる男気も感じます。
こういうとき「全国の店舗で本日以降順次販売」などといって、店舗に置いていない場合のクレームに対して保険をかけるプレスリリースも少なくありません。
こういうとき「全国の店舗で本日以降順次販売」などといって、店舗に置いていない場合のクレームに対して保険をかけるプレスリリースも少なくありません。
全体としては、シャープ、良品計画に比べると、社会的意義の強調が少ない点が若干不満です。
しかし、定量的な材料が揃った非常に取り上げやすい内容で、これぞ大企業の本気、というリリースでした。
しかし、定量的な材料が揃った非常に取り上げやすい内容で、これぞ大企業の本気、というリリースでした。
なお余談ですが、「エアリズム」の名を冠した商品名でありながら、「オールシーズン用」と書いていることから、天下のユニクロでも「涼しさ」の証明は難しかったものと思われます。
まとめ
有名企業のマスクの販売、という切り口で3社のプレスリリースを分析しました。
訴求点や書きぶりが全く違って、筆者も興味深かったです。
訴求点や書きぶりが全く違って、筆者も興味深かったです。
今回は取り上げたのがどれも有名企業だったので、タイトルはややシンプルめではありましたが、それでも基本編で述べた、
- ①ニュースバリューをタイトルに入れる
- ②数字を出す
- ③大切なことは第一段落で書ききる
- ④社会的意義を説く
の4点の重要さが伝われば幸いです。
このブログもプレスリリースを活用して多数の読者を獲得し、ユニクロのマスクをアフィリエイトできるくらいには成長していきたいと思います!